カウフマン氏考案!政治参加するための指南書 グローバル・パスポート(10ページ目)
上岡みおによる、グローバル・パスポートの翻訳(10ページ目)。
画像引用:Global Passport to Modern Direct Democracy | International IDEA
参加すべき政治階層を見極めよう
■ 市町村の政治
民主主義国においては、市町村は、教育、社会インフラ、福祉、ゴミ処理や上下水道管理といった事業を担っていることが多い重要な組織です。
近年では、区画単位あるいは地区単位の自治組織を設けて、住民が直接的に予算編成に参加できる仕組みを導入する大都市も増えています。
市町村の機構に組み入れられているダイレクト・デモクラシー制度の多くは、地域社会が牽引し、システムとして定着させていったものです。
ダイレクト・デモクラシーが制度として市町村に導入されている国は、世界の半数に達しています。
それはヨーロッパに多く、次にアフリカ、アメリカ、オセアニア、そしてアジアという順になっています。
■ 都道府県や州の政治
都道府県や州は、教育、環境、経済開発、公共交通機関、地域開発計画などを管轄する組織として大きな権限を有しています。
連邦国家では、中央政府と州政府が権限を分かつことで、権力を分散させています。
州政府には、独自憲法を制定することも、独自に国際間協力を進めることも、認められています。
州政府の権限が大きいところほど、制度としてのダイレクト・デモクラシーが充実している、州政治への直接参加権が確保されているといった傾向があります。
アメリカやメキシコは、国政レベルでは住民発議による住民投票制度を採用していませんが、国内には、住民発議による住民投票制度を導入している州政府が存在します。
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上岡みおによる補足:
カリフォルニア州では、およそ2週間後の2018年11月6日に、州を3つに分割する住民投票が行われる予定でした。
(住民発議を行った)ドレーパー氏は3分割を提案した理由について、学校制度や高い税金、インフラの劣化といった差し迫った課題に対応するため、それぞれの地域社会が市民のためにもっと合理的な判断を下せるようになると説明している。
提案によると、3州の人口はそれぞれおよそ1230万~1390万人。ロサンゼルスなど6郡はカリフォルニア州に、サンディエゴやオレンジなど12郡は南カリフォルニア州に、サンフランシスコ・ベイエリアやサクラメント北部など40郡は北カリフォルニア州に入る。
もし住民投票で承認されれば、知事が連邦議会に通知して、連邦議会で新しい3州の創設を承認するかどうかの採決を実施する。
アメリカでは、
・ 州政府の権限 > アメリカという連邦国家
・ 州政治への直接参加 = 州民発議による州民投票
という制度になっています。
州民が
「カリフォルニア州は大きすぎて不具合が生じている。三分割して、不具合を調整しよう!」という発議を行い、
⇒ それが州民投票によって可決され、
⇒ 議会の承認を得られれば、
アメリカには新しい州が2つ増えることになりそうでした。ところが、
(カリフォルニア州の)裁判所は、「この措置に関する住民投票を認めることによる潜在的損害の方が、提案を後の選挙へと先送りすることによる潜在的損害よりも大きい」と指摘、州務長官に対し、11月の住民投票の見送りを指示した。
というのです。これは、世界で最も優れた(=民意を反映できる)住民投票制度を
備えているスイスや台湾では有りえないことです。
カリフォルニア州を3分割する住民投票は見送られましたが、これもまた、
・権力を分散させるとはどういうことか
・住民が政治に直接参加するとはどういうことか
・住民が政治的提案を行うとはどういうことか
・民意をつぶす制度とは何か
を考えるときの、現在進行形の見本といえるでしょう。