住民発議による住民投票 & 無条件ベーシックインカム

CHダグラス『社会信用論』翻訳者・上岡みおが世界の賢人に学んだことをつづるブログ

国際フォーラム ベーシックインカムとダイレクトデモクラシー

2018年3月6日、沖縄大学にて開催されたフォーラム
「ベーシックインカムとダイレクトデモクラシー」

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■ 主催者・上岡みお より


「ベーシックインカムとダイレクトデモクラシー」は、不思議なご縁と偶然が重なったおかげで、私が敬愛してやまない4名の方たちに揃ってお話いただくことができた「奇跡のフォーラム」です。

登壇者のお話には「誰一人困窮者を出さない社会」を作ろうとするときに、欠かすことができない知恵が詰まっています。

・貧困は市場経済主義とセットになっていること
・行政による画一的な対策では、困窮者は救いきれないこと
・誰もが幸せに生きていける社会にするには、全ての人に生活に必要なお金を配る「無条件ベーシックインカム」が有効であること
・よりよい社会にするには「個」を大切にしなくてはならないこと
・「個」を大切にするには「直接民主制度」(=ダイレクトデモクラシー)が必要であること
・ベーシックインカムとは「分かち合い」
・ダイレクトデモクラシーとは「話し合い」

「誰もが幸せに生きていける社会は、「見たことのない未来」を思い描くのではなく「なつかしい経験」から再構築するほうがよいのではないか」というのは、登壇者のおひとり具志堅さんのご意見です。

「沖縄シマ社会」には、困窮者を出さない知恵がありました。

「沖縄シマ社会の知恵」を再発見することが、制度としての「無条件ベーシックインカム」や「住民発議による住民投票」をイメージすることにつながるのではないかとも思うのです。

そのような発想もあって、ベトナム~スイス~スウェーデン~沖縄をつないで、「誰もが幸せに生きていける社会制度」を考えてみようという企画が生まれました。


■吉井美知子氏(ベトナムのストリートチルドレン)

沖縄大学教授の吉井美知子先生は、ベトナムのストリートチルドレンの救済活動に奔走してこられた方です。

フォーラムでは、ドイモイという「市場主義経済」を導入した「社会主義国」ベトナムの素顔と、吉井先生の活動内容についてお話いただきました。

市場主義経済が導入されると、農村が現金不足となり、経済格差が広がり、困窮者が大量生産されていきました。それは現在進行形の問題であり、万国共通の問題でもあります。

吉井先生は、行政による困窮者支援の問題点も指摘なさいました。困窮者の家庭事情は千差万別であるのに、行政は画一的かつ無意味な対策しかしないため、困窮者はさらに追いつめられる事態にもなっているそうです。

行政支援が画一的になりがちなのは、万国共通の悩みです。行政支援のあり方そのものを見直さなくては、取り残される困窮者は増えるばかりとなります。


■エノ・シュミット氏(無条件ベーシックインカム)

スイスでベーシックインカム導入の是非を問う国民投票を主導したエノ・シュミットさん。

シュミットさんもまた、「お金」によって、困窮者が生み出されていることをお話になりました。 

かつては、家族あるいは部族のメンバーは、互いに支えあって生きていました。

社会はあたたかく、飢える人はいませんでした。

「お金」に牛耳られるまでは。

お金・雇用・賃金労働によって、あたたかい社会は破壊されていきました。


「お金」によって破壊された「あたたかい社会」を、「お金」を配ることで再構築しようというのが「無条件ベーシックインカム」のアイデアです。

「無条件ベーシックインカム」を導入することによって、ひとりひとりが「お金のため」ではなく「社会のため」「人のため」に働けるようになると、シュミットさんはおっしゃいます。


■ブルーノ・カウフマン氏(住民発議による住民投票)

住民発議による住民投票制度は、政治に直接的に民意を反映させることができる制度です。

「住民発議による住民投票制度」を利用すれば、「無条件ベーシックインカム」のような新しい社会制度導入を提案することも、既存法律&可決法案を廃止させることも、可能になります。

カウフマンさんは、ダイレクトデモクラシー(究極的には「住民発議による住民投票制度」)の世界的有識者です。政治学者であり、ジャーナリストであり、EUの民主化アドバイザーでもあります。

住民発議による住民投票制度が整った国はスイスだけでしたが、2018年、台湾がスイス並の「住民発議による住民投票制度」を導入しました。

それについてカウフマンさんが書かれた記事がこちら。

www.swissinfo.ch


フォーラムでは、台湾がスイス並の「ダイレクト・デモクラシー制度」を導入したことを、この記事に先駆けて報告していただきました。

隣国台湾が、世界最高レベルの民主制度を導入する一方で、日本の民主制度は、欠陥と不備が目立ち始めています。

日本の民主制度のどこに欠陥があるのかを理解するための手引きとなるのが、カウフマンさんが書かれたダイレクトデモクラシーの指南書「グローバルパスポート」です。

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画像引用:Global Passport to Modern Direct Democracy | International IDEA

「グローバルパスポート」には、日本人が知らない世界の常識がつまっています。当ブログにて日本語訳を進めていますので、ぜひお読みになってみてください。


■具志堅要氏(沖縄シマ社会)

具志堅さんは、沖縄シマ社会の研究家です。シマとは島ではなく村落を意味します。

琉球王国の雅やかな社会ではなく、庶民が支え合って生きていた社会を、ここでは「沖縄シマ社会」と呼んでいます。

沖縄シマ社会では、「分かち合い」(=ベーシックインカム)と「徹底した話し合い」(=ダイレクトデモクラシー)が大切にされてきました。

シマ社会では、労働の成果は「わたしたちのもの」であり、「わたしたちのもの」であることによって「わたしのもの」となりました。

加えて、シマの意志決定の場においては、徹底した話し合いがなされてきました。

安易な多数決によって決定するのではなく、全員が合意することに重きが置かれていました。

このような意志決定過程のなかに、ダイレクト・デモクラシーの本質があるように思えます。

 
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当ブログでは、カウフマンさん考案の「グローバル・パスポート」の日本語訳を解説つきでご紹介するなど、フォーラムではお伝えしきれなかった貴重情報を、惜しみなく提供していく予定です。

Youtubeに公開済みのフォーラム映像とあわせて、誰もが幸せに生きていける社会にしていくヒントとなれば幸いです。

 

 


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